憲法9条の新たな局面 弁護士 髙崎 暢
1 岸田政権は、防衛大綱改定、「敵基地攻撃能力」保持、防衛費大幅増強、辺野古基地建設強行、南西諸島への自衛隊ミサイル部隊配置等々「戦争できる国づくり」と障害となる憲法9条破壊の道を突き進んでいる。
憲法9条は、何度か危機に晒されながら国民的運動で跳ね返してきたが、いま新たな局面に立たされている。
総選挙で改憲勢力が3分の2を維持した。特に、自民、維新、国民民主だけでその数を確保した。現在の参議院は、自民、公明、維新、国民民主で3分の2を超えている。この4党で合意すれば改憲発議が可能となる。仮に、夏の参議院選挙で、自民、維新、国民民主だけで3分の2を獲得すると改憲発議は現実味を帯びてくる。公明は結局改憲に反対はしない。
維新と国民民主は、昨年12月与党側の憲法審査会の幹事懇談会に参加し改憲論議の加速を煽った。維新は、自衛隊を明記する9条改正と緊急事態条項創設を盛り込んだ新たな改正案をまとめようとしている。
米中対立が激しい国際情勢のもとで中国が冒険主義的な軍事拡大路線を走る。台湾有事に近い状態になった場合、「このままでは日本を守れない」との改憲の気運が一気に高まる可能性がある。安倍元首相の「台湾有事は日本有事であり日米同盟の有事である」との発言はその伏線である。
なお、改憲手続法は、CM規制や最低投票率の縛りもなく、公平公正な国民投票にはならない。
2 岸田政権が狙う改憲(壊憲)のひとつに自衛隊明記がある。従来の政府解釈は、「自衛隊は自衛のための必要最小限度の実力」であり、2項の戦力には当たらないし、「必要最小限度の範囲内にとどまれば核兵器を保有することも合憲である」としてきた。そうなると、自衛隊の明記は、「自衛のための核兵器の保有が可能である」と憲法上確定することになる。それは「核兵器を含む武力の行使を可能とする国家」になるということである。
3 この局面を打開するには世論の高まりと国民的運動が不可欠で、改憲内容の危険性を早く知らせることである。それによってポピュリズムの維新、国民民主の動きに歯止めをかけ、「このままでは」と不安に思う人たちに、ヒロシマ・ナガサキの体験で勝ち取った9条の徹底的な平和外交こそが人間の安全保障であるという根源的な問いかけを強めることである。
同時に、「改憲は不要・危険」の声を「1000万人署名」につなげ、市民と
野党の共闘の力で、参議院選挙で立憲野党の躍進を勝ち取ることである。
(ほっかい新報2022年2月6日掲載)