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女の会の訴訟における訴訟指揮等の暴挙に対し強く抗議する声明を掲載しました!

原告121人及び代理人9人の全員が女性により構成される「安保法制違憲訴訟・女の会」(以下「女の会」という。)は、2016年8月15日、国家賠償請求訴訟を東京地裁に提訴し、2022年1月28日、第16回口頭弁論期日を迎えるに至ったが、そこで以下に述べる暴挙というほかない訴訟指揮等がなされた。

 上記期日は午後2時30分に始まり、午後3時に代理人3人の意見陳述を終え、その後、2通の準備書面の陳述と書証の確認が行われ、続いて4人目の代理人が「今後の立証について……」と発言を始めたところで、武藤貴明裁判長が右手を前に出しながら小声で何かもごもご言い、左右の陪席に目配せするとさっと立ち上がり、裁判長を先頭に後ろの扉からあっという間に消えてしまった。

 原告代理人も原告らも傍聴人も、何が起きたのか理解できず、呆気に取られるほかなかった。代理人が、残っていた書記官に、裁判長に戻ってくるように伝えてほしいと再三要請し、書記官は二度に亘り裁判官にこれを伝えに行ったが、裁判官は閉廷したので戻らないと答えるのみで、埒が明かないまま時間が経過したため、原告代理人と原告らは協議し、この日は裁判官に再度要請をして引き揚げることにし、午後4時30分に法廷を後にした。

 原告代理人と原告らが廊下に出ると、行く手を阻むように、エレベーター方向に金属製の柵と高いパーティションが設置され、男女職員が何十人も配置されており、制服制帽の警察官も配備されていた。原告らや傍聴人は非常口から外に出るよう誘導された。原告代理人が交渉し、代表が12階の民事第6部の書記官室に行ったところ、廊下には書記官らが総出で待ち構えており、さらに1階にいた職員らも上がって来て遠巻きに監視を続けるという状況であった。原告代理人及び原告らは、書記官を通じて抗議の意を表明して解散したが、裁判所の正面には警察車両が止まっていた。

 原告らは、審理が尽くされていないまま一方的に審理を打ち切り、警察官を含む多人数の配備により原告らを威圧した上記の訴訟指揮等に対し、2022年1月31日、民事訴訟法第150条に基づく異議申立てを行った。その後、口頭弁論調書を閲覧したところ、裁判長が判決言渡し期日を同年3月25日午前10時と指定したなど事実に反する記載がされており、民事訴訟法第160条第2項に基づく異議申立てを同年2月14日に行った。

 上記の訴訟指揮等は、女の会の原告らの弁論権を侵害する行為であるとともに、同原告らを故なく敵視した女性差別にあたる行為でもある。安保法制がもたらした立憲主義の破壊と社会の暴力化が司法にも及び、日本の民主主義が根底から破壊されつつあることに慄然とせざるを得ない。特に、女の会の原告ら及び代理人らは何ら暴力に訴えることなく平穏に訴訟を追行していたにも拘わらず、警察を裁判所庁舎の内外に呼び寄せて威嚇した裁判所の行為は、およそ民主主義国家にあるまじき醜状というほかなく、我々はこれを断固糾弾する。

 安保法制違憲訴訟は、これまでに判決が言い渡された全ての事件において、憲法判断を回避し、「戦争が起こってから訴えよ」と言わんばかりの眼前のリスクを直視しない判決、立憲民主政の国家のあり方が根底から破壊されたことに何らの問題意識も向けない判決ばかりが続いている(2022年3月25日に言い渡された女の会の訴訟の判決も同様であった。)。司法が違憲立法審査権の行使を懈怠し司法に対する国民・市民の期待と付託に背き続けている状況を我々は目の当たりにしてきたが、女の会の期日においてなされた上記の裁判所の行為は、司法が原告らに暴力的に対峙し、違法に対応したもので、その任務を完全に放擲し、寄り添うべき国民・市民に対して牙を剥く暴挙というほかないものであった。

 このような暴挙は、基本的人権の擁護と社会正義の実現の観点から断じて許されるものではなく、ここに強く抗議するものである。

安保法制違憲訴訟全国ネットワーク

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